Blenderとか3DCGとか

スクリプト寄りです。

Blenderミートアップイベント BlendxJP (レイアウトとプリビズについて思うこと)

2016年8月20日。とんでもない神イベントに参加できました。

 

【BlendxJP】

 

既にいろんな方がブログや twitter で感想を記述されています。そのあたりは

Blenderミートアップイベント BlendxJP (#blendxjp ) - Togetterまとめ

BlendxJP後夜祭 - Togetterまとめ

を追って頂ければ。

 

今回、初めて blog を書きたい衝動にかられ、アカウントを取りました。

 

それはある登壇者の発表が自分にとって、考えさせられる内容だったからです。なのでイベント全体ではなく、一部に絞った記事になります。

 

酒向大輔 氏。

 

作画監督として、アニメーターとして、活躍なさっているかたです。発表の内容は『アニメーション制作現場での、レイアウトにおける Blender の活用事例』でした。

 

実は、何年か前に仕事でお世話になったことがありました。

そして前にも後にも、酒向氏以上に解りやすく論理的に、現場で教育して下さったかたには出会っておりません。

「画力の訓練と、構成力の知識」に関して、氏自身が非常に深いものをお持ちなのは間違いなく、特に後者が、酒向氏の師としての魅力を数段引き上げているのを実感しております。

なにせ、終始「なるほど!」しかない現場でしたから。

 

本当に短い間のご縁でしたが、この場を借りて改めてお礼を申し上げます。

そしてこれからも宜しくお願い致します。

 

 

さて、私情はともかく本題。

 先述のご縁の際に酒向氏は初めて Blender を触られ、その後に色々あっての今回の登壇となったわけですが、氏が「レイアウト」とおっしゃった内容に衝撃を受けました。

 

3DCG 業界未経験のかたに説明しますと、この業界でのアニメーション制作を行う企業は、「アニメ系」「ゲーム系」「映像系」と大きく別れ、それぞれでノウハウが大きく違ったりします。

・「ゲーム系」:CG はコンピュータの演算によるもの、という事を重要視する。プログラムに強い。

・「映像系」:3DCG ツールを使って魅力的な絵を作る事を重視する。美術性やリアル性が高い。

・「アニメ系」:セルアニメ、セルルックアニメ、ジャパニメーションのために 3DCG を利用する。萌える。燃える。

ざっくりとこんな感じで。異論はあるでしょうが、私見はこんな感じです。

あと、「遊技機系」という言葉もありますが、上記全てにまたがってくるので、今回の分類からは外します。

 

 私は今、そのうちの「映像系」に見を置いています。この分野では、ずっと前から大切と認識されつつ、大手以外は中々踏み出せない工程というものが存在しています。

・「プリビズ」

プリ・ビジュアライゼーション。細かなアニメーションを付ける前に作られる動画を指します。

カメラの設定、キャラクターやオブジェクトの位置や動き、カット切り替わりのタイミングを決めるものです。

モデルは大雑把な仮のものを使うのですが、ハリウッド映画ではこのプリビズを俳優に見せて「このように動いて欲しい」というオーダーをする例もあると聞きます。また、カメラマンはプリビズに記述された設定に従って実写素材を撮ったりもします。

つまり、動きのレイアウトを早めの段階で確定させるのです。

 

 シン・ゴジラでは

『シン・ゴジラ』白組によるCGメイキング映像 - YouTube

の 1:51~ がそれに当たります。是非ご覧ください。

 

  中々踏み出せない、と書きましたが理由があります。「映像系」にとってプリビズの導入は、あらたに作業時間をプラスして行わなくてはならないからです。

 

一方、酒向氏に昨日このお話をした際、氏は「プリビズ」という言葉をご存知でありませんでした。

氏にとっての「レイアウト」は映像系でいう所のプリビズにあたり、氏は 3DCG の導入にあたり、自然とプリビズを作成していらっしゃったのです。また、それについて「手書きが 3DCG に変わっただけですよ」とおっしゃっていました。

 

この意味を自分なりに考えました。以下考察です。

 

 手書きでレイアウトを切るということは、時間がかかる上に責任重大で、後になっての切り直しは一大事です。

分業のなかで、レイアウト→原画→動画というように、責任の度合いと制作の順序が同じ流れに乗っているのは、長年をかけて築き上げたシステムだからでしょう。

 

一方、 業界として若い 3DCG 企業の中小手では、この流れが混在することがよくあります。特に 3DCG ツールはアニメーションの補完が自動的であるため、初心者でも一連の動きが作れてしまいます。

そして、手書きでの原画やレイアウトにあたる業務も、経験の浅い者が請け負うワークフローになりがちな罠が待ち受けています。

結果的に、絵コンテをそのまま立体にしただけのレイアウトが出来上がったり、また、絵コンテをもとに発想を広げたレイアウトを切る権限が与えられない、という状態になりがちです。当然、後々にレイアウトからリセットするリスクも高まります。

 

本来は豊富な経験と知識が必要な「レイアウト」という作業を、3DCG 業界は近年になって「プリビズ」という言葉で認識し、作業量を増やす必要が生まれたと感じているのではないでしょうか。

 

それらの重要性と、費やす時間をずっと認識していた手書き業界では、プリビズは「単純にコンピュータに筆をかえただけ」で済む便利な手段になります。裏を返せば、それを新しいものとして認識しなくてはならない 3DCG 業界は、今やっと「レイアウト」の本来の重要性を認識しているのでしょう。

 

もちろんこれから、3DCG 業界でもプリビズは普及してゆくでしょうし、レイアウトもどんどん魅力的で独創的なものになってゆくと思われます。

それに期待しつつ。自分も頑張る次第です。

 

 

とっても長くなりましたが、今回のイベントで最も衝撃的な気付きでしたので、つらつらと書いてしまいました。

 

他にも素敵なことだらけで、本当に神イベントでした。

また、参加します。その時にはまた宜しくお願いします、なのです!